1年前と同じような軌跡をたどる

おかしいな、あなたを選んで、あなたに選んでもらって、あなたとじゃれて、歩いて、進んできたつもりだったけれど

もっと変わっていたかった

いまからでも遅くないかい

もう隣を歩くことは叶わないかもしれない

それでもかまわない

いつか私はまた誰かの隣にいることを選ぶかもしれない

それでもさ

あなたを私の唯一無二として心のどこかに置いといていいかな

春がくれば、

あなたはまた桜の花びらが風に舞うその向こうで朗らかに笑うのでしょう

緩やかな洋楽の似合う笑顔

切なさなんて忘れているようで肌身離さず持っているようで

いろんな言い訳を盾にして私を一思いに刺した

そのときの表情を作った要素なんか一つも覚えていない顔でさ

もうあなたとは踊らないのだろう

あの川べりを一緒に歩くことが叶ってもその先に私が望むような未来はない

何回も繰り返した、自分を納得させる言葉を未だ繰り返して

夜が更けて朝が来る

あなたといて私が得たものはなんだったんだろう

あなたのためならなんでもできると思っていた

だけどあなたを中心に回っていくには何かが足りないことにどこかで気づいていて

もしあなたを中心に回っていくことができたとしてもあなたの唯一無二にはなれなかったことに気づいていて

私が、私の欠けている部分に気づくためにあなたに出会って、その出会いを消費したんだとしたら、それはすごく悲しいことだ

春がくれば、

私は散り落ちる桜の花びらの中が風に舞うその向こうへ走り抜ける

その先にあなたが見えればいいけど、きっと見えない

でもわかる

どっかで笑ってるんだってこと

続いていくあなたの日々を想像するには充分な時間をあなたとともに過ごした

私が唯一持っていくであろう

あなたとの日々の産物

桜はまだ咲かない

つぼみもまだ充分に膨らんでいない

不明確な未来に焦るように進んでいくこの冬の終わり

春を駆け抜けるために私はどう準備したらいいのかもわからない

私の強がりも死んだフリも

私には無効だ

あの人に伝えたい言葉もすべて伝えた

ただ、桜がすべて散り落ちた春の向こうに、あなたがいない未来が待つことが悲しい

脈絡もなんにもない文章のなかで、私は自分を見つけなくてはならない。

 

そこには相手もいない

 

自分しかいない紙の上で、自分だけが文字を綴る

 

そこに他人の気配はない

 

未来の自分に手をいれられることも望まない

 

ずっと

 

迷っていて

 

終わったと思った

 

悪い癖が続いて

 

終わったことに食いついていて

 

もうどんな未来を見ればいいかも分からなくなっているんだ

 

あなたは、この先の私の人生に、

間違いなく必要ない人

 

なのに、どうして

あなたの服の裾をつまむ必要があるのか

 

私にもよく分からない

 

さみしかった

 

ずっとさみしかった

 

振り返ったあなたの顔はいままでに見たことがないほど怪訝で

 

いままで何かを、かろうじて何かを信じ合っていた、そのかたちすら失くしてしまったことを知る

 

言葉尻が私を心配しているのか

あなたの身を心配しているのか分からないあなたの言葉の意味を濁らせているのは私でしょう

 

あなたの前で大人びたくて使った一人称

だいぶ舌に慣れてきたと思ったのに使えなくなった

 

そんなに

あの日々が幸せだったかな

 

分からないけどあなたとの日々がこびりついて私の眼の底を染めている

 

書き尽くせない感情の波が寄せて返して

 

私はこの体まるごとその波のなかで揺れている

 

当てにならない文字を信じたり疑ったりしながら

私は分かっているんだ

信じるべきはあなた或いは私

そして足りない言葉があることも

目の前に差し出される文字を自分の都合のよいように解釈してしまうことも

 

大丈夫かな

 

あなたの声を思い出すとまだ好きだと思える

ただそれは私にすら固定できなくなった流動的な私

 

嘘をついてあなたを好きだと言ってきた

その嘘を私は証明してしまったばかりで

 

言い訳をするならば

あなたを好きだと思ったときに言えなかったから嘘のように言い続けなくちゃならなかった、と言うけれど

 

なんにせよ

愛されたくて嘘を言った汚さは消えないね

 

それで

あなたは本当に好きなものを目指して

いけるのかな

 

ずっと

あなたと一緒に歩いていけるならなんだってよかった

その確信が脅かされないならもっと色んなことに目を瞑っていられたと思う

 

私を好きじゃあないこと

他にもっと魅力的なものがあること

 

いや、どうだろうな、やっぱり耐えられなかったかな

 

ハグしてもキスしても

いまいちあなたの体温が感じられなかった

 

そこにあるのは

緊張した堅苦しさ

 

いつもいつも

うまくいっているとは言えなくて

 

でもどうしていいか分からなかったね

 

たまに呼吸を分け合って

時間を分け合って

 

一度だけ

いまならちゃんとあなたとキスできると思った

 

もうそのときには私の心はだいぶ蝕まれていて手遅れもはなはだしかったけど

 

もう私に心を許してくれないと分かった夜に

私はあなたの前から私の名前を片付け始めて

もう終わりだって

ちゃんと思えたんだ

少なくともしばらくはおさらばだって

思えたんだけれども

 

私の外の声に

私の意思を渡した

 

どっかに残った習慣が

あるはずのない希望を塗りつけようとした画面は

あなたにとっても不安なものだったし

私にすら違和感でしかなかった

 

どうすればいいと

もはや悩む段階でもない

 

片付けようと思って

うまくゴミ袋にはいらなかったから

必要以上に切り刻んだ かつての大事なもちもの

 

もう好きじゃないのに

それが大事じゃなくなることがこわくて

 

大事にできなかったのに

大事にしなきゃいけない気持ちは続いていて

 

反射してくる言葉が私を貫いて

 

なにも大事にできていなかったことを知る

 

つらいんだ

 

変わらなきゃいけないことがさ

 

自分から捨てた

自分から望んだ変化だったのに

 

言い置くことはできれば端的に、

でもちゃんと間違いの無い言葉でいなきゃいけない

 

感情に言葉を取り替えられてまた訳の分からないことを言うまえに

ちゃんと整理して

謝るべきことに謝って

 

ざわざわする

何を言うのにも、

たぶんもうちゃんと取り合ってもらえない

それでも何かを言わなけりゃ気が済まない自分の性がものすごく嫌で

 

綺麗な私はどこにいったんだろう

 

どこから話はじめればいいんだろう

 

言い訳じみて

少しつくりもののにおいをさせて

私はまたあなたと話すのだろうか

話す?

言葉を押し付けるのだろうか

 

私が無くしたもの

本当は無くしたくなかったもの

彼女じゃないからその権利もないのに矢鱈にあなたを傷つけたこと

でもやっぱりあなただってちょっとは悪かったこと

習慣的にあなたのもとに言葉を置いてしまうこと

あなたに会う前日の弾けるような幸せが恋しいこと

でも決してあなた自身を恋しく思う気持ちが続いているわけではないこと

 

あなた自身を恋しく思えず、

取り合ってもらえないと分かっていながら

習慣に頼って言葉を取り出したから

気味の悪い文章が生まれたこと

 

たったそれだけのこと

 

もう私が大丈夫だって大丈夫じゃなくたって

あなたには関係ない

あなたに期待するものなんか何にもない

期待以上のものを絶対に出さないあなたにむしろ安心する私に

どうしてもっと早くなれなかったろうと思うと同時に、なんにも期待できないことをやっぱり寂しいことだと思っていて

 

素敵な恋をしてくれ

期待して

期待を実らせて

ほんのすこし触れるだけで泣きたくなるほど幸せになるような

 

僕は明日ちゃんと言葉をあなたのもとに届けるよ

それがあなたのためになるとは思わない

けれどマイナスにはならない文章を書くよ

きっとあなたはごめんなさいとしか言えない

だけどそうさせてくれ

あなたに聞いて欲しかったのかもしれないから

というか、聞いてほしかったんだ

聞いてほしかったってことを言うから、それだけ受け取って、次へ行ってよ

 

わがままで悪いね

せめても日が昇ってから文章を作るから、

あなたにとって痛みを感じるような

気味の悪さを感じるようなものは書かないように努めるから、どうかあと1日よろしく頼む。

強い言葉であなたを弾いて、

あなたが向こうに飛んでいったのを見た。

でも、あなたは私の傍に帰ってきてくれると思ったんだな。

愛されていると、思っていたかったんだ。

でもあなたは飛んでいったっきり、私の傍には帰ってきてくれなかった。

ごめんって謝るとさ

物陰から「僕もごめん」って

完全に怯えた顔。

川にうつる自分の顔を眺め直して

いつもと同じ自分かどうかを確認しなおしたものさ。

ずっとそばにいるってことは

腹の中の怪獣とも仲良くするってことじゃないのかい。

そうじゃなくちゃ

ずっと、なんて本当のおとぎばなしじゃないか。

これっぽっちの涙とか言葉に負けてもらっちゃ困るんだよ。

絵本なんかで読んだ。

さいころからずっと繰り返してきた。

つよいつよい愛情は

手に入れようと思うとなかなか上手く手にできないもんなんだね。

私の理想はきっとあなただった

あなたで間違いないと思うための過去があった

ちらつく過去に

曲げられない今

お互いに少しずつ不安を持って

だけどそれを丁寧に埋めていく

雨の降らない夜

聞かないでほしいこと

でもいつかあなたに話したいこと

喉にひっかかる小さな骨

 あなたが、私と話したいと言った。どうでもいいことを話して、3時間が経った。あなたはまだ話し足りないみたいだった。あなたは昔、私では話し相手として物足りないと言った。だけれども、私はあなたと色んな話をしてきたと思う。あなたの話に驚き、感心し、笑い、反論し、私の底まで言葉を探ってあなたと会話してきた。だから、それでも足りないのだったら仕方ないと思った。

 あなたは、私では物足りないから、違う人のところに行くと言った。私が裾を引っ張ると申し訳なさそうな顔で振り返ったけど丁寧にこの手を外すとまた歩き出して、その足はやがてスキップを始めた。私はせめて、あなたのその軽やかなスキップが見られたことを喜ぶしかないと思った。でも、あなたと言葉を交わした日々の方が、その景色よりもずっと甘かった。

 やがて私はあなたとの日々に縛られることをやめて、軽やかに歩く、そんな夢を見た。でも私は、悲しみ抜くと決めていた。私をあなたとの日々に縛っているのはあなたとの日々ではなくて、もっと大きなものだ。私はその全体像を見るまで、私をここから解放してはいけなかった。

 心の底から、あなたを好きだと言った。受け入れてほしいと、あなたを見た。

 自由に選べるはずのことだって、あなたには選べない。何度も何度も私の心に拳を打ち付けて、それでも答えが出せずにいるようだ。もう、私は答えが出るのを待ってはいなくて、あなたに呼ばれればあなたの傍に、鬱陶しがられればすこし離れた場所に、この身を移す。どうせ心は縛られているのだから、身がどこにあったってあなたの傍にいたって、苦しいものは苦しい。

 歌を歌った。再び私と話したいと言ったあなたの耳に、それは届いた。

 新しい約束をした。春の日の中をふたりで歩く。もう叶わないと思っていた私の夢だった。

 どうしてあなたが私と話したいと言ったのか、理由を問うことは私には簡単にできる。だけど、それは問わないでいた。あなたの、話したいような話したくないような、まどろんだ気分の中からそれを引き出すことが、すこし怖かった。できるならば、あなたから話だしてほしかった。

 私は胸の中で言葉を繰り返す、繰り返す。ここに、心はある。あなたの心を弾き返すにも受け入れるにも必要な心は、でも決してあなたにすべて受け入れてほしいとは思っていない。

 声を聞きながら、あなたの顔を思い浮かべていた。

 あなたが私を呼ぶことが、なにか不思議なことだった。

 あなたのかたさもやわらかさも体温も、私には不明瞭で思い出せないものになっていた。

 あなたは、あんまり私の想定外のことはしない。

 あなたにとっての私も、そうだろう。

 あなたの一言一言を拾いながら、私はあなたの希望を推測する。その言葉のきっかけを考える。

 そして、何日か後に私にむかって投げかけられる問いに、私は構える。

 

 春の風がふく。傘をさした私は風に振り回されながら歩く。それでも確実に、私の足は目的地にむかい、そして帰路につく。

 こんな生活にも慣れたよ、と言った。

 慣れながら、あなたへ向けていたエネルギーを薄めていく。大きなことがあるたびに、このあとあなたのいる場所に帰るのと、ひとりの家に帰るのと、なにが違うんだろうと思っていた。

 まだ、答えは出ないままだ。